本協会が設立される以前の話。ベランダにハトが居座り困っているという相談の電話を受け、現場へ駆けつけてみると、ジェル状の忌避剤がそこら中に塗布されていました。以前、別の業者へ依頼して塗布してもらったようだが、効果はなかったとのこと。ハトは一度巣を作り、子育てが始まってしまうと、その場所への執着心が極度に高まります。ハトのこうした習性を理解していれば、忌避剤を塗布してもあまり効果は期待できないと予測できたはず。侵入を確実に防ぐには、防鳥ネットを張るなど物理的な対策しかありません。しかし、お客様は他の選択肢の説明を受けること無く、業者に言われるままに任せてしまったようでした。結果、ハトはすぐに舞い戻ってきた。施工業者に話をしても、「契約通りの施工は完了したので返金できない」と言われ、取り合ってもらえず、泣き寝入りとなったようです。後日、同業者にこの話をしたら、決して珍しい話ではないということがわかりました。

 本来、お客様には料金のことだけではなく、他の選択肢、そのメリットとデメリットも含め、漏れなく説明するのが当たり前です。しかし、業者の知識が浅かったり、対策引き出しが少なかったりすると、こうした当たり前の説明がなされないことがあります。一部の未熟な業者によって、業界全体のイメージが悪化し、その火の粉が自らにも降りかかることを懸念しました。こうした状況を防ぐためには、自社の技術を磨くだけではなく、業界全体としても良質なサービスを提供できるようにする必要があると考えました。そうした想いを共有する有志を全国から募り集まったのが(一社)日本鳥獣被害対策協会です。2013年9月に設立され、最初は11社のペストコントロール業者からなる小さな集まりでしたが、2016年3月現在、合計34社で構成される団体となりました。今では参加企業の業種も広がり、建設業者、ガラスクリーニング業者、ビルメンテナンス業者などからもご入会いただいております。こうして集まった企業には、「道具や資材に詳しい者」、「現場経験が豊富な者」、「高所安全作業に長けている者」など、様々なスキルを持った技術者がいます。その技術者達が、組織の壁を越え、惜しむことなくノウハウを提供し合うことで、お互いのスキルはみるみる上達しました。共通の志で結ばれているから生まれた自由で闊達な風土かも知れません。今後も技術研修会や現場実習等を開催し、大きな現場は共同で施工し、日常的にはSNS等で情報共有しながら、会員同士の技術の向上に努めていく所存です。

 まだ始まったばかりの取り組みですが、獣害対策にも目を向け始めました。都会で増え続け家屋に侵入するハクビシンやアライグマの問題。個体数が著しく増加し、農業や生態系にまで被害を及ぼしているシカやイノシシの問題。危急の社会的課題となっております。こうした状況の中、当協会もその一環を担うべきという使命を感じており、行政機関との調査協力活動、学術機関と連携した啓蒙・教育活動など、公益的な活動にも力を入れております。

 今後とも野生生物とのよりよい共存関係を築くことを目指し、関係各位の皆様と共に活動を行ってまいりますので、より一層のご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

2016年3月
一般社団法人 日本鳥獣被害対策協会
会長 東田大介